厚生労働科学特別研究事業

訪問看護BCP

訪問看護事業所のBCPについて

 訪問看護を提供する機関は、小規模事業体が大半だ。例えば、5人のスタッフで運営する訪問看護事業所で、1人Covid19に感染し、3人が濃厚接触者となってしまったら、訪問看護の継続はどうするか?
他の事業所から支援を派遣してもらえるのか?代替訪問を依頼できるのか?また、支援依頼の際の連絡の方法は?具体的なケア内容や手順の申し送りは?契約は?利用者への説明は?逆に、他事業所でクラスターが発生し、応援を依頼された時の対応は?
 感染症だけではない。ここ数年、毎年のように甚大な被害をもたらす自然災害。もはや、他人ごとでは済まされない。豪雨の影響で河川堤防が決壊し、道は冠水、半数以上のスタッフの自宅も甚大な被害を負ってしまったら、どのようにして、スタッフ、そして利用者のいのちと暮らしを守るのか?
 「災害なんていつ来るか分からないので、来たその時に考えればいい」このような考えは、あまりに楽観的すぎる。平時にできないことは、有事にできるわけがない。平時に考え備えていなければ、有事は場当たり的に対応するしかなく、すべてが後手に回る。これでは、利用者や住民の大切ないのちや健康、そして暮らしを守ることはできない。
 こうした有事対応に実効性を持つツールとして注目されているのが、Business Continuity Plan: 事業継続計画:以下BCP)である。このBCP策定により、Preventable Disaster Death(PDD:防ぎ得た災害関連死)の約半数を阻止できる可能性があると報告されている(Yamanouchi S. et al.2019)。
 とはいえ、冒頭で触れた通り、訪問看護事業所は小規模体が多い。つまり、自施設のBusiness Continuity Plan(以下、BCP)だけでは、有事対応は十分に機能せず、やはり平時からの近隣の事業所等との相互協力交渉や協定が必要となる。そして、保健所を含む行政や医療・介護機関との連携も必須だ。さらには近隣住民の方々やNPOとの普段からの関係性の中でぐっと選択肢が広がることもある。
 普段のケアにおいても、我々が選択肢をたくさん持ちうることは、臨機応変、且つ適切なケアに繋がることは、皆さんもよくご理解いただけると思う。この策がダメでも、これはどうか、これならもっとうまく行くかもしれないと、個別性の高い、つまり目前の想定外の事態にも、自身にケアの選択肢が豊富にあることは、ケア方針に関する意思決定や実践をスムーズにし、また、そこからのアレンジも容易にする。
 有事も同じである。たいていの場合、災害は人の想像を超えてやってくる。想定外のドラマの連続だ。だからこそ、平時から考え検討することで、有事の選択肢を増やしておく。これが、最も重要なことだ。
 各機関のBCP策定のプロセスで、必ずや地域の組織間で協力しないと解決しないこと、協力することで限られた資源を有効に活用できることが明らかになってくる。更なる取り組みとして、事業所同士の連携はもちろんのこと、「地域BCP(山岸ら.2019)」として、地域の医療やケアの継続を検討していくことを筆者は強く推奨する。
 この手引きが、訪問看護事業所のBCP策定、さらには、地域を面と捉え、その医療やケアの継続について考える際の一助となれば幸甚である。 厚生労働省 在宅医療の事業継続計画(BCP)策定に係る研究研究代表者   山岸暁美

災害は社会の弱点をあぶりだす。
平時にできないことを有事に行うことは難しい。
最大の災害対策は、平時からの住民・行政・地域の医療・介護・福祉をはじめとする各種資源との連携と協働により、災害弱者を想定し、彼らを守っていくことであり、実はこれは地域包括ケアシステム・地域共生社会構築のプロセスに合致する。 山岸暁美、今井博之、西原洋浩. 治療. 2019

研究班組織

研究班本体組織

一社)コミュニティヘルス研究機構 機構長・理事長
慶應義塾大学医学部公衆衛生学教室
山岸 暁美
独立行政法人国立病院機構本部
DMAT事務局・DMAT事務局長
小井土 雄一
大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
救命救急センター・救急課主任部長
池上 徹則
山梨市立牧丘病院・整形外科・訪問診療・医師
日本在宅医療連合学会災害対策委員会 委員長
古屋 聡
医療法人社団プラタナス
桜新町アーバン クリニック・院長
遠矢 純一郎
芝浦工業大学・システム理工学部・准教授 市川 学

【研究協力者】

日本医療法人協会副会長 鈴木 邦彦
全国在宅療養支援医協会 会長 新田 國夫
日本在宅ケアアライアンス 副理事長 武田 俊彦
倉敷中央病院 総合保安部 危機管理防災課 竹岡 修

【研究班事務局】

一般社団法人コミュニティヘルス研究機構 貝原 敏江

訪問看護BCP分科会組織

【訪問看護BCPタスクフォース】

一社)コミュニティヘルス研究機構 機構長・理事長
慶應義塾大学医学部公衆衛生学教室
山岸 暁美
ウィル訪問看護ステーション 岩本 大希
みんなのかかりつけ訪問看護ステーション 藤野 泰平
みんなのかかりつけ訪問看護ステーション 大久保 貴仁
医療法人葛西医院訪問看護ステーションかっさい 平山 司樹

【訪問看護BCP分科会メンバー】

日本訪問看護財団立おもて参道訪問看護ステーション 高橋 洋子
みんなのかかりつけ訪問看護ステーション東京 寺﨑 譲/小久保徹
西蒲中央病院みさと訪問看護ステーション 若林 文代
訪問看護ステーションリハケア芦城 宮本 由香里
常滑市民病院訪問看護ステーションきずな 渡邉 和子/間野 高彰
滋賀県看護協会 訪問看護支援センター 草野 とし子
滋賀県看護協会訪問看護ステーション 日永 めぐみ
葵訪問看護ステーション 山本 克美
社会医療法人甲友会 西宮協立訪問看護センター 稲葉 典子
安芸地区医師会総合介護センター 板谷 裕美/金行 由美
西部健生訪問看護ステーション 岡本 恵
訪問看護ステーション きなし 南田 義孝
ウィル訪問看護ステーション豊見城 山川 将人
Prepare for the Worst, Plan for the Best

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手引き・テンプレート・シミュレーション訓練キット